日本には寝たきりの高齢者が150~200万人いると言われています。
日本は世界各国と比べると寝たきりの高齢者が圧倒的に多い国です。
そもそも欧米諸国には寝たきりという概念がないそうです。
身体が動かなくても昼間は椅子に座って生活したり、援助が必要でも車いすなどに座って生活することが普通だそうです。
ですから欧米の人たちからすると「寝たきり」というのは理解できないそうです。
では日本人だけがなぜ寝たきりの高齢者が多いのでしょうか。
実は日本の寝たきりの高齢者の9割が、起きて生活できると言われています。
つまり日本の寝たきり高齢者は、「寝たきり」ではなく「寝かせきり」であるということです。
なぜ日本は「寝かせきり」の高齢者を作ってしまうのでしょうか。 そこにはいくつかの理由があります。
<医療・介護体制>
端的に言ってしまえば、日本の医療・介護は「安全第一・至れり尽くせり」です。
とりあえず安静を保ち、そして何でもやってあげるということが、優しさであり正しい介護や医療であるという感覚があるように思います。
足を怪我した高齢者が痛みを我慢して頑張れば、杖を使って歩けるとしても、危ないから車いすに乗せる。
その車いすも大変だからと家族や周りの人が押してあげる。
そうすることで歩けなくなり、さらには車いすに乗るのも大変で危ないからと言って、ベッドにずっといさせて何でも運んであげる。
本人も楽だからそれを望む。
そうして身体中の筋力は低下して「寝たきり」になってしまう。
まさに本人と周りの人が協力して寝かせきりにすることで、寝たきりの高齢者を作り上げているわけです。
これは医療でも言えることです。
日本の平均入院日数は世界各国と比べてとても長いです。
(2016~2018のデータです)
圧倒的ですよね・・・
ここにも安全第一主義が見え隠れしますね。
というよりも事なかれ主義と言った方がいいのかもしれません。
「何かあると不安だから入院しておこう(させておこう)」
といった感じですね。
安静にしておくというと聞こえはいいかもしれませんが、結局は何もしないということです。
何もしなければ筋力は落ちていき、できることはどんどん減っていき最後には寝たきりになります。。
本来的には「できることは極力自分でやって、どうしても必要なところだけ手助けする」ということが大切です。
そしてその上で重要な考え方が「何が起こっても自己責任」ということです。
恐らく日本で「安全第一・至れり尽くせり」の根底にあるのは、「責任論」「ゼロリスク信仰」であると思います。
だれも責任を取りたくないから、責任が発生する状況にはしたくない。
だからリスクゼロを目指すために、寝かせきりが最適。 非常に残念なロジックですね。
何かあったら誰がどう責任を取るんだ
↓
何も起こらないようにリスクを極力減らす(リスクゼロを目指す)
↓
高齢者の人たちに何もさせなければリスクは発生しない
↓
安全第一・至れり尽せり
↓
寝かせきり
どこにも本人の希望などが出てこないのです。
多くの場合、責任がどうこうと騒ぐのは家族です。
それも自分で介護などをしていない家族が騒ぐことが多い。
人生はその本人のものでしかありません。
「自己責任」と言うと冷たく感じるかもしれませんが、そうではありません。
何が起こっても自己責任であるということは、自分の意思で何でも決められるということです。
そう、自由です。
人生への考え方につながりますね。 つまり「人生観」や「死生観」です。
<人生観・死生観>
寝かせきりを作ってしまう理由として「人生観」「死生観」もあると思われます。
延命措置にもつながる話ですね。
福祉大国スウェーデンは、本当に危険な状態でなければ終末期などでも好きな時にお酒を飲んだりするそうです。
そして医療・介護従事者も止めないそうです。
日本では考えられないですね。
「人生を最後まで楽しむ。自分の生きたいように生きて、自然に任せて最期を迎える」というのがスウェーデンの人生観・死生観だそうです。
そしてそれを周りの人たちも尊重して最期まで見守るそうなのです。
日本は全然違いますよね。
介護施設などで高齢者が転倒して骨折したら訴訟。
食べたものがのどに詰まったら訴訟。
80歳超えた高齢者が癌になったら家族は医師に「手術して治りますよね?何とかしてください。大丈夫ですよね?」
もはや死なないことが目的になってしまっているように思えます。
ただし日本も最近は少しずつ価値観が変わってきているようにも思えます。
どちらが正しいかではなく、自分だったらどちらの人生や人生の最期の方がいいですか?
私は絶対にスウェーデンの方がいいです。
最期まで自分の好きなように生きたい。
そしてそのために発生するリスクは当然受け入れる。
その結果迎える最期は、誰のせいでもなく自分の寿命と受け入れていきたいと思います。
<まとめ>
高齢者を寝かせきりにしてしまう理由は他にもあるかと思います。
例えばスウェーデンの高齢者で子どもと暮らしている人は4%しかいないのに対し、日本では40%を超えているそうです。
このように文化違いによる理由などもあるでしょう。
しかし、やはり最大の理由は日本人の「ゼロリスク信仰」ではないかと思います。
医療や介護だけでなく、生きていく上でリスクをゼロにすることは不可能です。
そしてリスクをなくすことばかり考えれば、自由は失います。
人生において大切なことは何でしょうか。
色々なことを制限して生きたいように生きられなくてもリスクをなくそうとすることでしょうか。
私は「リスクを受け入れて人生を最期まで楽しむ」ということが幸せなのではないかと思います。