【歯医者の裏側⑤】歯医者は正しい治療計画をたてられない

医療
【歯医者の裏側⑤】歯医者は正しい治療計画をたてられない

歯科治療をする際には、状態を診断して治療計画を立てます。

そして基本的には、その治療計画に沿って治療を進めていきます。

患者の皆さんは、診断したらそれに対応する唯一の治療計画になると思われているのではないでしょうか。

患者予想

こんな感じですかね。

しかし実際は、治療計画をたてる際には診断内容だけでなく様々な要因も影響します。

実際の治療計画

こんな感じです。

今回は歯医者がどのようなことを考えて治療計画を立てているか説明してみますね。

歯科治療の目的はなに?

歯科治療目的

まずはそもそも歯科治療の目的が何なのかを考えてみましょう。

おこるクマ

虫歯や歯周病を治すことに
決まってんだろ!!

こんな声が聞こえてきそうです・・・・

確かにそう思えるのですが、実はちょっと違います。

虫歯や歯周病などの口腔内の病気を改善することは、目的ではなく手段です。

口腔内の病気を改善するという手段を使って、目的を達成しようとしているわけです。

では目的は何でしょうか?

目的は人生を豊かにするためです。

口腔内の病気を改善したり予防することで、好きなものをいつまでも食べられれば人生は豊かになりますよね。

また口腔内の病気は全身への影響もあります。特に歯周病は様々な全身疾患への影響があることがわかっています。

口腔内の病気を改善したり予防することで、全身の健康にも貢献でき、これもまた人生を豊かにすることに役立ちますね。

手段と目的

例えば死ぬときに虫歯があるかないかなんて、どうでもいいですよね。

最期まで美味しく食事ができて楽しく生きられれば、正直虫歯があろうがなかろうが関係ないわけです。

治療計画に正解はない

治療計画

治療の目的が「人生を豊かにすること」なので、人によって目的は変わることになります。

全身疾患や経済状況や性格など、本当に様々な要因が治療計画には関わってきます。それらの要因の中には、私たち歯医者が把握できるものもあればできないものもあります。

全ての要因について説明するのは不可能なので、一つ「年齢」という要因を例として説明していきます。

「年齢」が治療計画に関与するのは、何となく想像がつくのではないでしょうか。

しかし実は「年齢」という言い方は正確ではありません。

正確に言えば、「残りの寿命」となります。

イメージしやすいように一つ問題を出してみます。

皆さんは歯医者になったつもりで治療計画を選んでみてください。

患者:男性 年齢80歳

<治療計画1>

・全ての部位をしっかり根本的に治療する。

・治療に1年以上かかる。

仮に納めた期間が160か月であれば、受給額は満額の1/3になります。

<治療計画2>

・機能を改善するためのみの治療に限定する。

・治療は1カ月程度で済む。

・治療後はその状態が、5年は何とか維持できるくらいと予想できる。

・治療後の機能レベルは、5年間であれば治療計画1にさほど劣らない。

皆さんなら治療計画1と2のどちらを選びますか?

どちらを選んでも間違いではないですよね。

ではもう一つ条件を付けてみます。

この男性は85歳で亡くなるとわかっていたとしたらどうでしょうか?

その場合は治療計画2を選ぶ方が豊かな人生に寄与できたと言えそうですよね。

100歳まで生きるとしたら、治療計画1の方が豊かな人生になりそうですね。

つまりここで重要なのは年齢ではなく、寿命なわけです。

びっくりするクマ

でも寿命ってわかるの?

はい、そうなんです・・・・

寿命は歯医者にはわかりませんし、もちろん本人にもわかりません。残念ながら医者にもわかりません。

要するに治療計画を立てる上で本来必要な情報は、得ることが不可能な情報なのです。

これは寿命に限った話ではありません。

治療の後どれだけ本人が歯磨きを頑張るのか、歯医者が伝えた注意事項などをどれだけ守ってくれるのか、などもわかりようがありません。


結局のところ、正しい治療計画というものは誰にもわかりません。

歯医者にもわからないのです・・・・・

大切なのは治療計画の内容より意識改革

意識改革

では歯医者にも正しい治療計画がわからないのに、どのようにして治療計画を立てているのでしょうか?

おこるクマ

まさか適当なのか!?

と思われた方、安心してください。

さすがに適当ではありません(笑)

ただし、ここからの話は私個人の考え方です。

他の歯医者も同じかはわかりません。

まずは寿命などの不確定要素を除いた確定的な要素を基に、ある程度の治療計画を形作ります。

そこから不確定要素によって、いくつかの選択肢が出てきてしまいます。

もちろん患者さんと相談もしますが、ほとんどの場合は患者さん自身も判断できませんから決定打にはなりません。

そこで私が最も重要視していることは、患者さん本人の「意識改革」に繋がる可能性が高い治療計画を選択するということです。

ここまで説明してきたように、残念ながら歯医者は正しい治療計画を判断することはできません。

患者の皆さんは、歯医者は何でもわかっていて何でもできると考えている傾向があります。

しかし実際にはわからないことも多く、出来ることも限られています。

これは医者も同様だと思ってください。

その事実を理解して、自分の身体の健康を守るのは自分しかいないことをわかってもらう必要があります。

つまり日頃の生活習慣こそが、健康への最大の武器なのです。

例えば口腔内の病気に対しての最大の武器は、当然歯磨きです。

私は治療を通してそのことを理解してもらうことが、最大の目標だと考えています。

そして治療計画は、理解してもらうためのツールの一つとして最適化するように心がけています。

患者さんの性格などを予想しながら行うものなので、当然狙い通りいくこともばかりではなく、上手くいかないこともあります。

上手くいかないときは修正を重ねていくわけです。

ただ上手くいくかどうかは別として、「豊かな人生」は自分で手に入れて守るべきものであることを少しでも伝えることが大切だと思うのです。

自分の健康は自分で手に入れるものです。

病院への依存は健康に繋がりません。

自分で健康を手に入れて、人生を豊かにしてくださいね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。