病気になったりケガをしたりして病院で治療を受けるとき、次の二人から医師を選べるとしたらどちらを選びますか?
- A. 経験豊富で技術のあるベテラン医師
- B. 医師になったばかりの新人医師
技術と経験以外の人間性などは同じと仮定しましょう。
いかがでしょうか?
まずほとんどの人がAのベテラン医師を選びますよね。
新米医師は技術がまだまだ未熟で、失敗しそうだから怖い気持ちもありますよね。
実際、新人医師は失敗するのでしょうか?
答えはYESです。
もちろん新人医師は失敗します。
というよりも
新人医師は十分なレベルで処置する能力をまだ持っていない
と言った方が正確です。
患者の立場としては不安になると思いますよね。
新人医師に対して、どう考えてどう対応するべきなのかを説明していきます。
能力不足は当たり前として受け入れなくてはならない
失敗するというより、合格点を取る能力がまだないということですね。
でもこれは当たり前ですよね。
どんな仕事でも最初からベテランのようにできる人は、ほんの一部の天才を除いて存在しません。
仮にそのような一部の天才のみしか医師になれないとしたら、医師は完全に不足します。
医療の崩壊です。
では新人医師の治療を受けるのが怖いと言って、誰もが新人医師の治療を受けなかったら、どうなるでしょうか。
次の世代の医師は育ちませんよね。
ということは、この先どんどん医療の質は下がり続けるということです。
これもまた医療の崩壊です。
つまり新人医師の能力不足は当たり前のことで、患者はそれを受け入れる必要があります。
そうでなければ医療は質も量も維持することが出来ずに、低下して崩壊へ向かってしまいます。
新人医師の成長と患者の犠牲
医師に限らないのですが、人は「失敗→経験→学び→リトライ」というサイクルを繰り返すことで成長します。
成長するためには失敗は必要不可欠なものなのです。
一人前の医師になるためには、たくさんの失敗をして経験を積み、そこからたくさんのことを学びながらまた挑戦しなくてはなりません。
それを繰り返していくことで、徐々に技術のある経験豊富な医師に近づくことが出来ます。
しかし他の仕事と比べて、医師の失敗(十分な能力がない事)は患者としては許容しにくいものであるのも事実ですよね。
扱っているのがモノではなく人の体ですから、本来失敗は許されるものではありません。
ですから新人医師にはベテラン医師などが指導医になり、簡単な内容の処置から少しずつ挑戦していきます。
ここで言う「簡単な内容の処置」とは、あくまで医師サイドから見た話です。
「あなたの処置内容は簡単なので、研修医が担当しますね。」
と言われたら、患者としてはどうですか?
簡単な処置だとしても、自分は経験豊富な医師に診てもらいたいと思う人が多数ではないでしょうか。
結局は、簡単な処置でも難しい処置でも同じことなのです。
綺麗事なしで言えば
「新人医師に処置されるという、犠牲となる患者が必要」
ということです。
もちろん患者の不利益にならないように指導医などは全力でフォローはしますが、最初から最後までベテラン医師が診た方がベターであることは言うまでもありません。
では、どのような患者が犠牲にならなくてはならないのかを説明します。
誰が犠牲を払うべきか
これは非常に難しい問題になります。
犠牲を払う人と払わない人を分けてしまうと、差別になりかねません。
そのように分けると、おそらくお金が基準になってしまいます。
ですから一人一人の人生のステージで分けて考えるべきです。
受診する科によって対象となる患者の年齢層なども異なりますので、一概には言えませんが、大まかに言えば
若いころはベテラン医師が、高齢になったら新人医師が治療をする
ということです。
もちろん高齢者の方治療の方が難易度は高くリスクも高いので、全てにおいて可能なわけではありません。
しかし根本的な考え方としては、若い患者に対してこそ優秀な医師が診るべきです。
このように言うと、決まって
「高齢者は死ねというのか!」
という論点のずれた意見が沸き上がります。
そうではありませんよね。
誰もが若いころはベテランに診てもらい、歳をとるにつれて新人にシフトしていくということです。
つまり人生を通しての医療の質の合計値は誰もが平等です。
一人一人は平等ですが、社会全体として子供や若い人と高齢者のどちらを優先的に守るべきかという話です。
当然子供や若い人です。
それは生物としての当然の姿でもあります。
子供の頃や若い頃に受けたものを、歳をとってから次の世代に同じことをして返していくのです。
Pay forwardですね。
最近は
- 労働世代 vs 高齢者世代
というようになってしまっている感があります。
しかし本来的には
- 労働世代は仕事などを通じて、高齢者も含めた社会を支える
- 高齢者世代は、労働世代が活躍しやすいようにサポートする
- そして社会全体で子どもたちを守る
というようにあるべきなのです。
新人医師への犠牲についても、このような思いを誰もが持っていれば問題にすらならないはずです。
心の豊かな世の中に近づけるために、一人一人の意識が大切です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。