医療というと、多くの人が「病気になってしまった時に病院で行うこと」というようなイメージを持たれているのではないでしょうか?
もちろん病気になったときに病院に行って治療を受けるということも医療の一つであることは間違いないのですが、本質的には医療とはそれだけではありません。
そもそも医療の本質的な目的は「健康を維持する」ということにあります。
病気になってしまった場合は、その病気を治すことで元の健康な状態に戻すために治療という医療を受けます。
これはもちろん大切なことですし、早期発見早期治療という言葉通り、早めに病院に受診して治療を受けた方が良いことは言うまでもありません。
しかし、その前の段階として最も理想的なことは、当たり前ではありますが「病気にならないこと」です。
つまり「健康を維持する」という医療の本質的な目的を達成するために、まずは病気にならない取り組みをしっかり行い、それでも残念ながら病気になってしまった場合に治療を行い元の健康な状態に戻すという両輪で医療は成り立っています。
「治療から予防へ」というようなことが言われるようになって久しいですね。
この言葉はかなり認知されるようになってきていると思いますし、実際自分自身の体のケアに気を使っている方も徐々に増えてきています。
しかし結果として表れてきている部分もあるかとは思いますが、残念ながらまだ本当の意味で浸透していないというのが実情だと思います。
これには色々な原因があると思いますが、まず自分たちはどのような病気に気を付けなくてはならないのか、またその病気にならないためにどうしたらいいのかを知らなくてはならないと思います。
人間の長い歴史の中で、最大の脅威だったのは細菌やウィルスによる感染症でした。
もちろん、現代も感染症はありますが、抗生物質や抗ウィルス剤をはじめとした薬が劇的に進歩してきたお陰で先進国では感染症により命を落としてしまうことは非常に減りました。
それに対して近年はがん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満などの生活習慣病や認知症などが課題になっています。
これらの生活習慣病などと感染症との間には大きな違いが存在します。
感染症は病院で診療を受けて薬を投与したり、免疫力によって「治す」ことが可能です。
もちろん未知の細菌やウィルスだったり、免疫力が低下していたり、医療が受けられないような場合は、感染症で命を落とすこともありますが、基本的には必要な医療が受けられて、最低限の免疫力があれば感染症は克服できることがほとんどです。
未知の細菌やウィルスは治療薬やワクチンが存在しないため、短期的に見れば命を落とす人がでますが、治療薬やワクチンができたり多くの人がその細菌やウィルスに対する免疫を獲得したら徐々に克服できる病気になっていきます。
そして「治す」ことができたら、その病気になる前の「元の健康な状態に戻る」ことができます。
されに言えばその病気に対する免疫を獲得していますので、その病気になる前よりも強くなっているとも言えます。
それに対して生活習慣病などは、「治らない」のです。
治らないというのは「元の健康な状態に戻らない」ということです。
例えば高血圧になり、病院に行って薬をもらったとします。これは薬を飲めば高血圧になる前の健康な状態に戻るというわけではありません。
薬を飲むと一時的に血圧を下げるだけであって、高血圧という病気を治すわけではないということです。
つまり薬を飲み続けなくてはいけないということなのです。 さらに安静にしていて免疫力を高めたりしても治るわけではありません。
このように、基本的には生活習慣病は、病院で治療を受けて薬を投与したり免疫力によって治すことはできません。
がんも治りません。
糖尿病も治りません。
心疾患も治りません。
脳血管疾患も治りません。
高脂血症も治りません。
肥満も治りません。
虫歯・歯周病も治りません。
つまり現代において問題になっている病気の多くが治療や免疫によって元の健康な状態に戻るというものではないのです。
そして、これらの病気を改善させたり、予防するためには食生活や運動といった生活習慣の見直しが非常に大切で必要不可欠です。
これは病院に行くことよりはるかに大切です。
というより病院に行って診療を受けても、生活習慣が適切でなければ意味がありません。
生活習慣病を予防したり改善するためには、病院に行くことではなく、正しい知識を身につけ、日常生活でそれをしっかり実践していくことこそが必要なのです。 自分の健康を守るのはまずは自分自身です。
生活習慣とは関係なく不運にも発症してしまう方もいらっしゃいます。
また社会的格差も生活習慣病の原因の一つという意見もあります。
ただし個人的には社会的格差よりも個人の努力で何とかなる自己責任の部分が大きいと思っています。
医療の本質的な目的とは、「健康を維持すること」です。
医療は医師のみで行うのではなく、医師と患者さんが一緒に取り組むものです。 医療を行うのは自分自身でもあるのです。