夕張市から学ぶべきこと

夕張市から学ぶべきこと

夕張市の医療の変化と夕張市民の意識の変化

病院がなくなって救急車もなくなった夕張市民は当然不安になったと思います。

しかしその結果人口流出、とはなりませんでした。

人口は減少していますが人口減少が加速したわけではなく病院閉鎖前と減少のペースは変わらなかったのです。少し驚きの事実です。

病院に頼らず自分の身体を自分で守ろうという意識を持つようになっていったようです。

実際にどのような変化が起こったかというと、病死が減って老衰が増えました。

死因別のトップ3である癌、心疾患、肺炎は概ね減少しました。

また、隣の市から呼ばなくてはならない救急車の出動回数も約半数になりました。

結果として医療機関に対する需要が減り、医療費が減るという結果になったのです。

これらは病院がなくなったことによる危機感から自分の健康を自分で守らないといけないという意識の高まりによって、市民一人一人が日頃からの運動や食事を含めた生活習慣を考え直し変えていった結果であると思います。

しかし医療費が減った理由は他にもあると思います。

病院がなくなったことで多少のことではなかなか医療機関にかかれなくなり過剰医療が減ったことも考えられます。

老衰が増えたことも原因の一つとして考えられます。

老衰が増えたことは医療の在り方や市民の意識の変化を顕著に表していると思います。

実は老衰と診断して死亡診断書を書くのは実は結構難しいらしいです。

基本的に老衰と診断するにはあらゆる病気を否定して年齢的な体力の低下という結論にするということです。

年齢的なことで病気ではないので積極的な治療は行わないということですから、近づいてくる死と正面から本人・家族が向き合わなくてはなりません。

あらゆる病気を否定するというのは高齢になればなるほど難しく、何もない人はとても少ないです。

ほぼいないと言ってもいいかもしれません。

つまり老衰は医学的・論理的なところから少し離れ、死を受け入れるという要素が含まれているのです。

死とは違いますが例えば整形外科に高齢者がたくさん並んでいるのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

「歩いていると膝が痛い、何とかしてくれ。」

でも湿布を出されるだけ。

「先生が歳だから仕方ないって言って湿布しかだしてくれない!もっとちゃんと診てほしい」

多くはこんな流れですね。

何か疾患のある人もいるかもしれませんが、多くの人は当たり前です。

以前と同じ体ではありません。これを克服したいならもっと若いうちから筋肉をたくさんつけておくとか筋肉の低下などを少しでも抑えるために毎日歩く習慣を作るなどしなければなりません。

本来は病院の出番ではないのです。

このように自分と向き合わず依存する感覚の人が多い中で、老衰を受け入れてもらうということがどれだけ難しいかということがわかりますでしょうか。

実際医師の中でも老衰と診断するのは逃げのような風潮もあるそうで、都心の病院や急性期病院などでは老衰の死亡診断書はほとんどでないそうです。

しかし、最近全国的にも老衰は少しずつ増えてきていて死因別の5位で6~7%になってきています。病院閉鎖後の夕張市での老衰の増え方は特に顕著だったようです。

この老衰が増えてきたということは生活習慣の改善によって病気が減ったといこともあるでしょうが、死への向き合い方、つまり死生観の変化が起こったのではないかと思います。

病院がなくなったので当然ではありますが、夕張市では在宅や介護施設での看取りが増えました。チューブなどにつながれて辛い治療をして最期を迎えるよりも、静かに家族に見守られながら最期を迎えることを選ぶ人が増えたのだと思います。病院閉鎖の結果なのかもしれませんが、それも死生観の変化に影響を与えたのだと思います。

どう最期を迎えるのか、これに高齢者や家族が向き合っていくということは、どう生きるのか、ということとほぼ同義なのではないでしょうか。 そしてそのように最期を考える上で病院による医療よりも介護の分野の方が大切になります。もちろん今でも非常に大切で医療の根底を支えてくれているのは間違いないのですが、今後はさらに重要になってきます。

事実、夕張市は病院を閉鎖して病院医療は縮小しましたが、介護の部分は充実させてきたのです。

介護を考える

このように夕張市は医療崩壊を起こしたことにより、市民の自律・自立の意識が芽生え、

医療の本質である「健康を維持する」「病気にならないようにする」ということに対して努力をしていったのです。

そしてその結果として「死生観」に変化が起こったのだと思います。

これらは全て「病院外医療」です。

人口減少、少子高齢化が進んでいく日本において、本来医療費問題は存在しませんが、介護分野をはじめとしたマンパワーの不足はどんどん進んでいく大きな問題です。

最期をどう迎えるか、死にどう向き合うか、最期まで人間らしくどう生きるのか。

どのような豊かな人生を送るのか。

これらのことをよく考えて自律・自立の意識を各々が持たなくてはならない時期なのだと思います。 この夕張市の事例は多くのことを教えてくれています。今後の日本の未来に向けて夕張市のことを知るのは必須であり受け継いでいかなくてはならないと思います。

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