医療従事者側の現状・問題

医療従事者側の現状・問題

医療の本質である「健康を維持する」「病気にならないようにする」ために予防を行うことは、もちろん個々の努力が必要不可欠です。

ですがこれらを実現するために知識を提供し啓蒙し、人々を導くのは医療従事者がやらなくてはならないことです。

つまり本質的医療を実現するために道を作り、人々にその道を指し示すことこそが医療従事者の本分ではないでしょうか。

治療という医療行為は、しっかりとした予防などを行っても残念ながら病気になってしまったりケガをしてしまった場合に行う最後の防波堤的な行為のはずです。

まずは予防のための知識提供・指導・啓蒙、やむを得ない場合の治療。

これが医療従事者の役割だと思います。

しかしそのような役割を医療従事者全員が果たせているかといえば、そうではないのが現状です。果たそうとすらしていないと言ってもいいと思います。

その最大の理由は医療がビジネスになってしまっているからだと思います。

多くの病院や診療所においても医療従事者の役割を果たし本質的な医療を行うというよりも利益をどう出すかということが目的になっているように思います。

病院やクリニックは自分たちが生き残るために病院を繁盛させることばかり考えていて、患者の奪い合いをしている現状です。

歯科の話になりますが、「絶対に抜かないで治します」「患者様のご希望に沿った治療」などのうたい文句が広告に載っているのをよく目にします。

これは患者への迎合であり医療従事者としてふさわしい姿ではないと感じます。

患者ウケをよくするために言っているにすぎません。患者を喜ばせることを言うことと

自分が正しいと考える診断をすることは全く異なるはずです。

「絶対に抜かない」

診査・診断もしていないのにそんなこと言えるはずもありません。抜かなくてはいけない状況は必ずあります。絶対はありえませんし、あってはなりません。

「患者の希望に沿う」

自分の診断が患者の希望に沿わない場合は診断を変えるのでしょうか?

医師は自分の専門的知識と経験をもって患者の病状を診査し診断します。

専門的な知識と経験があってこその診断であり、専門知識と経験のない患者が診断結果に口をはさめる余地はありません。

診断は医療従事者の存在意義そのものであり、それを簡単に曲げるようであれば医療従事者の資格はありません。

診断した結果、いくつかの選択肢が考えられる場合に医師はその選択肢をメリット・デメリットと共に患者に提示・説明をし、患者がその中から選択し同意していくのです。

これがインフォームドコンセントであり、患者の希望通りに沿うことはインフォームドコンセントではありません。

これを患者のみならず履き違えている医療従事者も多数いると思います。

あるいは理解はしていても集患するために患者の希望通りに沿うようにしているのかもしれません。

だとしたら最悪です。ぜひ医療従事者を辞めていただきたいと思います。

診療所レベルでの話をすれば、

主たる医療従事者=経営者

となってしまっていることがほとんどです。

これにより

医療<経営

という状態になってしまっていることが多くみられます。経営が成り立たなければ確かに診療所は存続できませんから経営は大切です。

しかし、医療というものは単純なお金稼ぎであってはならないはずです。

人々や社会に必要な価値を提供する代わりに対価としての報酬を得るのです。 それなのに、自分が贅沢をするためのお金儲けに医療を用いている医療従事者=経営者がとても多いのです。

しかしその反面、厳しい状況の中、自分を犠牲にしながら現在の医療をギリギリのところで支えている医療従事者も多くいます。

日々忙殺されながらも目の前の患者さんに向き合って必死に、自分を犠牲にしても戦っているのです。

このように現状をギリギリのところで守っている人たちは医療の本質を理解していたとしても日々を乗り切ることで精一杯だと思います。

これは仕方ないと思います。このような人たちがいるからこそ、現状が維持されているのです。

医療従事者として医療に本気で取り組んでいる人ほど自分を犠牲にしながら大変な思いをしている反面、医療より金儲けを優先している人が過剰医療などを行い、お金を稼いでいるのです。

医療の本質を志さない人間は医療従事者であるべきではないと思います。

医療従事者としての役割を果たすからこそ、それに対する報酬を得られるという流れが正常の流れのはずです。

このような状況をできれば医療従事者の良心やプライドで改善してほしいのですが、現実的には残念ながら難しいと思います。ある程度システムで制限する必要があると思います。

経営という部分を考えると予防は疎かになります。病名が付かないと診療報酬が発生しないのです。つまり予防のために患者を診察してもお金はもらえず、病気になった人でないと保険制度上報酬は発生しないということなのです。ここに関しては医療従事者の問題というよりは制度の問題が大きいというのは事実です。

さらに医療は他の業種と決定的に異なることがあります。

医療の本質的な目的は「病気にならないようにする」「健康を維持する」といったことになります。

つまり病人をいかに減らしていくか、これが医療の本質です。

しかしこれを実現すればするほど医療分野の市場を縮小させることになります。

目指す理想と利益が完全に逆の方向に存在します。

これは他の業種にはない医療分野特有のジレンマです。

このようなことを考えると正しい医療を行うためにはある程度医療従事者の生活を一定ラインで保障する必要があることに加えて、自由競争主義をある程度制限し、ことでバランスを崩すような稼ぎ方をしている医療従事者を排除していく必要があると思います。

本気で医療の本質を実現しようとしている医療従事者や、ギリギリのところで支えている医療従事者が報われ、医療をないがしろにしている医療従事者が好きにできないような制度が必要だと思います。

そして高い志を持った医療従事者が今後増えていくために教育の在り方を根本的に見直していかなくてはならないと思います。これは現状を知っている私たち医療従事者の役割だと思います。

この先本質的な医療を実現していける制度作り、未来の医療従事者が本質的な医療を行うプライドと志を持てるように私たち医療従事者はあるべき姿を見せなくてはならないと思います。 医療は他の業種とは異なるのです。

ビジネスとしての性質を完全に否定することは難しいとは思いますが、人の命や健康を守りそれを未来へ続けて世代を超えてつなげるという使命があるのです。