【大丈夫じゃない】リスクゼロの医療など存在しない

医療

日本人は本当にリスクゼロ信仰が強いです。

特に医療に対してはその傾向が顕著だと思います。

当たり前なのですが、病院で治療を受ける上でノーリスクなんてことはあり得ません。

そもそもリスクをゼロにしようとすると、デメリットの方が大きくなることは多々あります。

リスクを取らずにメリットを得ることはできません。

例えば自動車で考えてみましょう。

自動車が道路を走っていることで、交通事故が起こるリスクが発生します。

もちろんできる限り注意したりすることで、事故を減らす努力は必要ですし大切です。

しかし自動車が存在して使われる限り、事故をゼロにすることは不可能ですよね。 自動車事故というリスクをゼロにするには、自動車自体を全て無くすしかありません。

しかし自動車を無くせば、無くしたことによる様々なデメリットが発生します。

逆に言えば、リスクを負って自動車を利用しているからこそ、享受できる様々なメリットがあるのです。

自動車は事故というリスクはありますが、現在もたくさん存在していて、とても多くの人が利用しています。

そして今後も無くなる気配はないですし、自動車を無くそうという意見もあまり聞くことはありません。

要は社会全体として、自動車によるリスクよりもメリットの方を選択して、リスクはある意味許容しているということです。

このようにリスクに対して得られるメリットを考えることや、リスクゼロにしたときに発生するデメリットを考えたうえで、何を選択するかを考えることが必要なことです。

しかし何かにつけてリスクゼロを求めるゼロリスク信者たちは、このようなメリットやデメリットを無視して、ただ「リスクを無くせ」とかわめき散らすわけです。

では医療について考えてみましょう。

<医療におけるリスク>

皆さんは「医療におけるリスク」と聞いてどんなものを想像しますか?

・治療をしても治らないことやさらに悪くなること

・手術ミスなどによって死ぬこと

・治療期間が長くかかったり、費用がかかったりすること

例えばこのようなことを思い浮かべる人が多いのかなと思います。

確かにこのようなこともリスクと言えると思います。

ただ、このようなリスクの前に前提として存在するリスクがあります。

これはほとんどの人が認識・理解をしていないと思います。

それは

治療そのものがリスクのある行為

ということです。

「は?」と思われる人がいるかもしれません。

しかしこのことを認識できていないことこそが、医療に対する認識の甘さです。

その甘さがゆえに、「何かあったら病院に行けばいい」というような病院依存体質や、自己管理への意識の低さにつながっているのだと思います。

「治療そのものがリスクのある行為」というのは、「治療をすることが体にとってデメリット」ということです。

先ほどの

・治療をしても治らないことやさらに悪くなること

・手術ミスなどによって死ぬこと

・治療期間が長くかかったり、費用がかかったりすること

というようなことは、「治療の結果として起こる可能性があるデメリット」です。

このデメリットが生じるリスクもありますが、その前に「治療=デメリット(体へのダメージ)」なのです。

~治療すること自体がデメリット~

誤解しないでもらいたいのは、治療することがデメリットのみだということではありません。

治療することによるメリットもあるけれど、それと同時に治療することはデメリットでもあるということです。

つまり治療によるメリットを得るために、治療によるデメリットというリスクを受け入れざるを得ないということです。

当たり前と言えば当たり前ですが、例を挙げて考えてみましょう。

80歳の人が胃癌になり、手術をして胃の2/3を摘出するとします。

その人の健康状態などにもよりますが、80歳という年齢を考えると体力自体が手術に耐えられない可能性もあります。

つまり、手術をすることでそのダメージに身体が耐えられず死んでしまう可能性があるということです。

また、身体が持ちこたえられて無事に胃の2/3を摘出できて退院したとしても、胃の2/3がない状態では、元のように食べることはできません。

当たり前ですが、胃の消化機能は圧倒的に低下します。

要は手術自体の結果にかかわらず、手術をすることで亡くなってしまう可能性があるというリスクや、手術が無事終わっても日常的な食生活に支障が出るというデメリットなどは、手術をする前から確定しています。

これらは手術の結果によって生じるリスクではなく、治療行為である手術自体が持つリスクですね。

治療自体がリスクでありデメリットであるということです。

手術が「うまくいくorいかない」で変わるようなものではありません。

では、なぜ行うこと自体がデメリットのある手術をするのでしょうか。

もちろん手術をすることで、そのデメリット以上に大きなメリットを目指すことができるからです。

この場合で言えば、手術をしなければそのうち死んでしまうけれども、手術をしたら生きることができるかもしれないということですね。

もちろん手術をしたから確実に生きられるというわけではなくて、生きられる可能性が出てくるということです。

当たり前ですが、要はメリットを得ようとした場合、必ず相応のリスクがあるということです。

そしてそれは医療でも変わらない事実です。

<「大丈夫ですか?」に対して>

臨床現場でよく患者さんから聞かれる言葉を紹介します。

皆さん少なくとも一度は言ったことはあると思います。

恐らく何度も言っている人の方が多いでしょうね。

それが「大丈夫ですか?」という言葉です。

医師「このような状況だから、こういう治療がいいと思います。」

患者「大丈夫ですか?」

医師「大丈夫とはどのようなことに対してですか?」

患者「リスクはないのですか?」

と言った感じです。

結論から言ってしまえば

「リスクがないということが大丈夫というのであれば、治療を受ける以上、大丈夫ということはあり得ません。」

ということになりますね。

<リスクゼロの医療>

治療には必ずリスクは存在します。

しかし「医療」ということで考えると、リスクのないものも存在します。

そもそも「医療」とは病院で行う治療と言ったものだけではなく、自分で生活習慣などを見直して、自己管理することで健康を維持するようにすることも医療の一つです。

いわゆる「予防」です。

この自己管理である「予防」にはリスクはありません。

そして生活習慣の見直しなどの自己管理によって、大半の病気を防ぐことができます。

もちろん全ての病気を防ぐことができるわけではありませんが、大部分を防ぐことができることは事実です。

ゼロリスク信仰や病院依存が強い日本人は特に、病院で行う「治療」にリスクゼロを求めますが、当然そんなことはあり得ません。

治療にゼロリスクを求めるのであれば、治療を受けないという選択肢しかありません。

そして医師側の立場から言っても、治療にゼロリスクを求め続けてくる患者はお断りです。 治療にゼロリスクを求めるような無意味なことをするのではなくて、予防というゼロリスクで行えることを自分自身で実践することをお勧めします。

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