高齢者たちが整形外科に並んでいるのを誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか。
よく見る光景ですよね。
そして「整形外科に通っても、膝が痛いのが治らない。レントゲン撮って、湿布出されて終わり。いつまで経ってもちゃんと歩けるようにならない。」
こんなことを高齢者が言っているのを、聞いたこともあるのではないでしょうか。
この言葉、どう思いますか?
はっきり言ってツッコミどころ満載です。
実はこれ、患者である高齢者の言っていることがおかしいのはもちろんですが、医師の対応もおかしいのです。
ではまずは病院での診察の流れを理解しましょう。
<病院での診察の流れ>
ざっくりの流れはこのような感じです。
医師による問診・レントゲン検査などの診査によって、病名を診断します。
病気やケガなどの悪いところが見つかり、診断がつけば治療・投薬などで改善を目指します。(生活習慣指導などを行う場合もあります。)
しかし、病気やケガなどの悪いところが見つからなければ、治療・投薬などの積極的な処置は行われません。
当たり前と言えば当たり前ですよね。
では「整形外科に通っても、膝が痛いのが治らない。レントゲン撮って、湿布出されて終わり。いつまで経ってもちゃんと歩けるようにならない。」
というのはどのような流れだったのでしょうか。
患者の主訴としては、「膝が痛い」ということですね。
それに対して、医師がレントゲン撮影をして診査をしています。(もちろん実際は、問診や触診などもしていると思われます。)
その結果どのような診断が出て、「湿布を出す」という対応になったのでしょうか。
普通に考えたら、「湿布を出す」というのは投薬の一種ですから、何かしらの病気やケガなどがあったと考えられますよね。
もちろん、実際にそのような場合もあると思います。
しかし、実は大半はそうではないのです。
整形外科に「膝が痛い」と通っても、毎回湿布しか出されない高齢者の大半は、診断の結果として膝に病気やケガが見当たらないという診断であることが多いのです。
要は、医学的には悪いところがないということです。
ここで二つの疑問を持つのではないかと思います。
一つ目は「病気やケガがないのに、なぜ湿布を処方しているのか」ということ。
二つ目は「膝が痛いのにどこも悪いところがないというのは、どういうことか」ということ。
それぞれ説明します。
<患者の間違った医師への評価>
「病気やケガがないのに、なぜ湿布を処方しているのか」ということについて、結論を言ってしまえば「患者に嫌われないため」「お金を稼ぐため」です。
日本人は薬が大好きです。
病院に行ったら、薬を貰わないと気が済まない人が多いです。
もし仮に薬を出して貰えなかったり、何か処置をしてもらえず帰らされたら「あそこはヤブ医者だ」という話になることが多いですよね。
例えば風邪。
風邪でしょっちゅう病院に行って、薬をたんまり貰いたがるのは日本人だけです。
すごい高熱とかの場合は別ですが、ただの風邪であれば正しい対処法は「良く水分をとって、良く寝る」ということです。
しかし、多くの人の感覚は違いますよね。
風邪で病院に行ったのに薬を出してくれず
「早く帰って、良く水分をとって、良く寝てください。薬は得に出しません。」
と言われたら、どう思いますか?
「あそこの医者は薬も出してくれない。ヤブだ。もう二度と行かない。」
という人多くないですか?
本当はこの医者の対応が正しいのですけどね。
膝が痛い話も同じです。
問題ないと診断されて湿布も出さずに終わりにしたら、ヤブ医者認定されますよね。
本当は湿布を出す意味なんてないのですけどね。
どうしても欲しければ、実費でドラッグストアなどに行って買えばいいだけの話です。
このように患者にヤブ医者認定されないために、湿布を出しているわけです。
そしてその患者のヤブ医者認定は、完全に間違っているというなんとも馬鹿げた話だということですね。
もう一つ湿布を出す理由として、湿布を出せば診療報酬が発生してお金が稼げるということがあります。
処方した方が収入は増える上に患者も処方してほしいと思っているわけですから、処方しておこう、となるわけですね。
これが冒頭での「医師の対応もおかしい」という内容です。
患者は「薬を出してくれる医者=いい医者」「薬を出してくれない医者=ヤブ医者」というような意味不明のロジックで、根拠のない馬鹿げた評価を医師にする。
医師は患者ウケと収入のために、自分の診断に対して矛盾した対応をとる。
本当に馬鹿げてますね。
<老いは病気ではない>
次に「膝が痛いのにどこも悪いところがないというのは、どういうことか」についてです。
これに対してこの場合の結論を言ってしまえば、「年齢的な身体の機能低下」ということです。
もっと簡単に言えば「歳だから」ということですね。
酷なようですが、歳をとって色々なところにガタがくるのは、人間が生きている限り逃れられない現実です。
こういうことを言うと
「老人を見捨てるのか」
というようなことを言う人たちが結構いるのですが、的外れもいいところです。
老いは、病気やケガではないのです。
当たり前ですよね。当たり前なのに理解していない人のなんと多いことか。
病院で治療などを行って改善させることのできる可能性のあるものは病気やケガです。
逆に言えば、病気やケガでないものは病院では何もできません。
医師がレントゲンなどによって診査した結果、病気やケガがなかったため、いわば「老化現象」として判断しているのです。
これを医師に治すことができるわけがありません。
心ある医師であれば、きっとこう言うでしょう。
「年齢的な身体の機能低下によるものです。少しでも筋力をつけてカバーするしかありません。膝が痛いから歩かないのではなく、無理のない範囲でウォーキングなどを少しずつ始めてください。筋力がついてきたら、ウォーキングの距離を長くしたり、軽い筋トレをするといいです。」
さらに、太っている人に対しては
「体重が重いというのは、負荷が大きくなることです。痩せた分だけ膝への負担は減ります。食生活を見直して体重を落としてください。」
このようなことを説明して、湿布を出さずに診察を終了することは非常に正しいのです。
しかし、多くの人はこの素晴らしい医師に対して、伝家の宝刀のヤブ医者認定するわけです。
本当に馬鹿げてます。
大半の人において膝が痛いのは、高齢になる前からちゃんと筋肉をつけておかなくてはならなかったのに怠ったからであったり、自制を怠って食べすぎを続けて太っていたりするからという原因があります。
はい、そうです。自分の責任です。
それを医師に「何とかしろ!」は、どうかしています。
医師は病気やケガを治す専門家です。
老いを治す(そもそも病気でないので治すという言葉が適切ではないですが)ことができる人間はこの世に存在しません。
そして老いに対抗できるのは、自分自身の運動習慣や食習慣などの生活習慣のみです。
ぜひ「何とかしろ!」と騒ぐ前に、痩せて筋力をつける努力をしてほしいものです。