皆さん「医局」というものに対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
テレビドラマなどでは、医局と言えば利権や政治でドロドロした様子が描かれていることが多いですよね。
そのような影響もあって、あまり良くないイメージを持たれている人が多いのではないでしょうか。
確かに医局には、そのような利権や政治的な面もあるのは事実だと思います。
しかし医局には、とても重要な役割がいくつもあります。
医局は医療界にとって、なくてはならないものの一つです。
それでは医局の役割などについて、説明していきます。
医局の役割
医局の役割を大きく分けると
- ・臨床
- ・研究
- ・教育
が3本柱だと言われています。
もちろん、これらは医局の役割として非常に重要なものですが、もう一つ医局には最重要とも言える役割があります。
それが
- 教授の人事権による、医師の配分機能
です。
テレビドラマなどでもよく見る
君は来年から〇〇病院に出向しなさい
というようなやつですね。
「パワハラのやつだ!!」
と思う人も多いのではないでしょうか。
確かにドラマでは、報復的な手段などとしての左遷のように使われているイメージが強いですよね。
しかし実は、この人事権は非常に重要な医局の役割なのです。
僻地医療を成り立たせているのは医局
教授の人事権による異動は、本来はパワハラに使われているわけではなく、ちゃんとした意味があることなのです。
異動の意味としては
- ・医局員である医師の経験と修行
- ・僻地を始めとした地方への医師の供給
というものがあります。
~医局員である医師の経験と修行~
これはイメージつきやすいのではないでしょうか。
場所が変われば、環境は変わります。
環境が変われば、求められる医療も変わります。
様々な場所へ数年単位で派遣されることで、医師としての経験は増えますし、様々な環境へ対応できるようにもなります。
要するに一人前の医師になるために、修行を積めるということです。
~僻地を始めとした地方への医師の供給~
この機能は医療界全体のために非常に重要ですが、あまり理解されていないように感じます。
医師も人間ですから、僻地や地方などよりも都会で働くことを希望する人の方が圧倒的に多いです。
科にもよりますが、医師不足で苦しんでいるのは、基本的には都会の病院ではなく地方の病院です。
自然の流れに任せてしまえば、都会はたくさん医師がいるけれど、地方には医師が足りていないという状態になってしまいます。
何とかしなくちゃ!!
これを何とかするのが、医局であり教授の人事権です。
教授は医局員の経験などを考慮しながら、医師を必要とする地方や僻地などの関連病院に、数年単位で異動をさせながら医師を派遣するのです。
つまり足りていないところに必要な医師を供給するわけですね。
医局のこの機能こそが、僻地・地方医療を維持するために必要不可欠な機能です。
医局の力が弱くなってきている
しかし近年、医局の力が弱まってきています。
医局に入る医師が、どんどん減ってしまっているのです。
これには様々な要因がありますが
- ・働き方改革
- ・女性医師の増加
などが主に考えられます。
医局員というのは激務ですから、働き方改革を叫ばれる現在は、まさに目の敵にされていて制度の変更などもありました。
卒業後、2年間様々なところに研修に行くことが義務付けられたスーパーローテーションなどは典型例です。
さらには女性の社会進出が進んできたことにより、医師も以前より女性の割合が増えました。
女性は男性に比べて医局に入る割合が、圧倒的に低いのです。
これらの要因などから、医局に入る医師は減少の一途です。
医局員の数を確保できない医局が多くある状態ですね。
医療格差の拡大
医局員が確保できず医局の力が弱まって、最も困るのは僻地や地方です。
医局から必要な医師を供給してもらえなくなってしまうのです。
そうなれば医師の配分はうまくいかなくなり、都会と地方の医療格差は拡大していく一方です。
そして地方の病院で孤軍奮闘する医師たちの労働環境は、おそらく世の中で最もブラックな環境になります。
2018年に複数の大学の医学部が、女子や浪人を不利に扱うといったことを行っていて社会問題になった「医学部不正入試問題」がありました。
この問題などは、医局の力に関係する典型的な問題です。
出来るだけ若い男性の方が、医局に入る割合が高く、長く医師として活躍できる存在です。
地方医療などを維持するためには、そのような人材を多く医師にしたいのです。
というよりは、そうしないと地方の医療の存続が難しくなってしまうのです。
ただ感情的に非難するのではなく、物事を多面的に見る必要があります。
良くなさそうなことでも、必要なことは存在します。
医局には悪い面もありますが、必用な良い面もあるのです。
そのことをよく理解しなくてはなりませんね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。