2023年になって初の記事になります。2023年のスタートとして、米について書こうと思います。
結論としてはただ一つで
- 皆さん、2023年はもっと米を食べましょう!!
です。
このままだと、そう遠くない未来に日本人が大好きな米を中々食べられなくなってしまうかもしれません。
米の消費量の減少
米の消費量は年々減少の一途にあります。
日本国民1人が1年間に食べる米の量は、1962年の118.3kgをピークに年々減少して、2022年には半分以下の50.7kgになっています。
60年前は月に平均10kgお米を食べていたのが、今は月に4kg程度になっているということです。
このような米離れが進んでいる理由としては、少子高齢化や世帯構成の変化や女性の社会進出だけでなく、食生活の多様化も理由として考えられます。
多様化というよりは欧米化と言ったほうが適切かもしれません。一つの例として、米とパンに対する支出額の推移を見てみましょう。
このグラフは、2人以上の世帯における米とパンの年間支出額の推移を表しています。
2011年にパンが米を上回り、2012年と2013年は米が巻き返したものの、2014年以降は一貫してパンが上回っています。
そしてその差は概ね開く傾向にあります。平均すると、現在の日本人は米よりもパンに多くのお金を使っているということです。
ちなみに米の自給率はほぼ100%である(98%)のに対して、パンの原材料である小麦の自給率はわずか13%です。
さらには、パン用の小麦の自給率は1%未満です。パンはほぼ100%外国産なわけです。
米農家の危機的状況
このような米離れが進む中、米農家は危機的状況に瀕しています。
以下は、個人経営の米農家の作付け面積別の年間所得です。2023年については、農林中金総研が試算をして算出したものです。
(単位:万円)
2020 |
2021 |
2022 |
2023 |
|
0.5ha未満 |
35.7 |
38.5 |
39.3 |
43.2 |
0.5~1.0 |
21 |
27 |
28.4 |
34.8 |
1.0~3.0 |
4.6 |
23.2 |
26.8 |
43.4 |
3.0~5.0 |
53.7 |
14.8 |
8 |
23.1 |
5.0~10.0 |
159.7 |
86.4 |
73.3 |
13.5 |
10.0~15.0 |
385.7 |
268.5 |
24.6 |
142.6 |
15.0~20.0 |
666.9 |
509 |
481 |
352.2 |
20.0~30.0 |
876.8 |
681.3 |
641.2 |
456.7 |
30.0~50.0 |
1226.5 |
970.6 |
908.9 |
625.2 |
50.0ha以上 |
1881.1 |
1442.9 |
1347.4 |
908 |
平均 |
12.6 |
5.5 |
9.1 |
25.6 |
※赤は赤字額、青は黒字額です。
これまでも米農家の経営は悪化の一途をたどっていますが、2023年の試算によると5ha以下では全てが赤字になっています。
5ha~10haにおいても、年間の所得が13.5万円ですから、ほとんど残らない状態になってしまう見込みです。
また、法人経営においても年々利益は減少を続け、2023年には経常利益が114万円の赤字になる見込みだそうです。
米農家が全体的にこのような危機的状況にある理由としては
- ・米価格の低下
- ・肥料などの高騰
などが挙げられます。
米の価格は、2019年~2020年ごろから下落の一途です。そして今後も当面の間は、米価格の下落は続くと考えられています。
その根拠は、米の民間在庫量が増加していることです。いわゆる米余りです。
元々米離れが進んでいたところに、コロナによって外食産業がダメージを受け、さらに在庫量が増えてしまっています。
米に限らず価格というのは、需給バランスによって決まります。需要が減ってしまえば、価格は下落します。
米の需要が大きく落ち込んでしまっているために、価格が大きく下落してしまっているのです。そうなれば、もちろん米農家の経営状態は悪化します。
さらにそのような状況に加えて、ウクライナでの戦争やサプライチェーンの混乱などによる肥料や原油価格の高騰が起こっているのです。
米農家からすれば、収入は減る一方なのにも拘らず、支出(必要経費)は増える一方なわけです。日本の経済状況によく似ています。
このような状況では、やっていけず廃業せざるを得ない米農家が後を絶たないことになるのも時間の問題です。
日本人が日本の米を気軽に食べられない時代が、もうすぐそこまで来ているかもしれません。
自給率と安全保障
日本人が大好きな日本の米を食べられなくなるのは大きな問題ですが、米農家がやっていけなくなることによって起こる問題は、それだけではありません。
最大の問題は、食の安全保障です。現在の日本の食料自給率は、カロリーベースで38%となっています。
その中で、米だけが唯一ほぼ100%の食料自給率を何とか守っています。
多くの米農家がやっていけなくなるということは、その最後の砦が壊れてしまうことを意味します。
※自給率は重量ベースの値。()内は飼料自給率を考慮した自給率。
品目 |
自給率 |
米 |
97% |
小麦 |
16% |
牛肉 |
35%(9%) |
豚肉 |
49%(6%) |
鶏肉 |
64%(8%) |
鶏卵 |
96%(12%) |
牛乳・乳製品 |
59%(25%) |
魚介類 |
52% |
野菜 |
79% |
果実 |
38% |
大豆 |
6% |
砂糖類 |
34% |
油脂類 |
13% |
(出典):農林水産省「食料需給表」(令和元年度)
食料を自国で調達できず輸入に頼るということは、海外の情勢によって食料の価格が大きく変動したり、場合によっては食料が手に入らない食糧危機にもなることもあり得ます。
言ってみれば、食料を輸入している外国に対して弱みがあるようなものです。国としての安全保障がないとも言えます。
そのような意味でも、最後の砦である米の自給率100%の維持は、非常に重要なことなのです。
まとめ
- ・日本人の米の消費量は、減少の一途
- ・日本の米農家は、危機的状況
- ・食料を自給できないということは、安全保障上の大きな問題
もちろん、自給率は米のみが100%であれば良いというわけでもありません。他のものに関しても、自給率を上げる努力をしていかなくてはなりません。
しかし極論を言えば、どれだけ外国から食料が入ってこなくなったとしても、米が自給率100%で余っているようであれば、一時的には何とかならなくもありません。
そしてそのような状況を維持するためには、米農家がしっかり稼げる状況が必要不可欠です。そのためには、私たち日本人が米をたくさん食べるのが一番なのです。
パンや小麦製品を全否定しているわけではありませんが、小麦の自給率は非常に低いのが現実です。
小麦の自給率を上げる努力も必要でしょうが、日本は気候的に小麦を作るよりも米を作る方が向いています。だからこそ、日本人は昔から米を食べてきたのです。
小麦は年間降水量1000mm以下という乾燥した場所で栽培するのに適しています。日本は年平均1718mmの降水量があります。
種子法の改正など、様々な問題があることも事実です。私たちが簡単に変えたりすることが出来ないことも多々あります。
しかし、日本の農家が作った米を食べることは出来ます。 日本の米農家を守って、日本の米を守るためにも、できるだけ米を食べてもらいたいと思います。