【騙されるな】手術成功率と技術は無関係

医療

手術成功率とは

よくテレビ番組などで「成功率〇%の難手術!!」というようなことを言っているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

ではこの手術の成功率とはいったい何でどのようにして算出しているのでしょうか。

実は医療現場で医師たちがテレビドラマのように患者さんやその家族に「この手術の成功率は〇%です」というような話をすることはほぼないですし、実際に医師自身がこれから執刀する手術の成功率が何%なのかもわかり得ないと思います。

経験豊富な医師であれば、感覚的に6対4くらいとか3対7くらいとか何となくはイメージするかもしれませんが、それはその医師の技術をベースにしたものなので医師によっても変動するはずです。

メディアやドラマで言われている「成功率〇%の難手術」などというのは何の根拠もない視聴者に興味を持たせるための餌でしかないのです。

メディアはこのようなことを平気で日常的にやりますので現場の医療従事者としては迷惑な限りです。

他にも「手術成功率」という言葉は統計的にも使われることもあります。

例えばある病院で癌の手術1年間で1000症例行い800症例が成功した場合、この1年間のこの病院の癌に対する手術成功率は80%となります。

この手術成功率は病院や医師の評価として有効な数字のように思えますが、実際にはあまり意味のない数字であると思います。

癌といってもどの程度の進行だったのか、何をもって成功とするのかによっても変わってきますし、癌以外の他の疾患を抱えているのかそうでないのか、年齢がいくつで免疫力・体力はどうだったのか、など予後を左右する因子は数多くありすぎるのです。

全てが同じであることはあり得ませんので、比較することはできませんし同じように扱って単純に確率を出せるものではないのです。 そしてこの手術成功率、病院や医師のステータスのようにもなっている面もありますが操作することができるのです。

手術成功率を上げるためには

手術成功率をあげるのは簡単なことで、成功する手術のみを行うようにすれば勝手に手術成功率は高くなります

そんなことは当たり前だけれど無理だと思うかもしれませんが、残念ながら実際に行われていることです。

大きな病院にはいくつもの関連病院があります。例えばAという病院の手術成功率を上げたいとしたら、成功しそうな比較的簡単な手術をA病院で行い、成功が難しいと思われるような手術を関連病院のB病院などに何かしら理由をつけて転院させることで、B病院の手術成功率は下がりますが、その分A病院の手術成功率は上がり雑誌などに素晴らしい病院として紹介されたりするわけです。

ですから手術成功率が高い病院が良い病院で低い病院は悪い病院だというように手術成功率で判断をするのは、実は危険だと思います。

これは病院としてだけでなく、医師個人としても行われていることもあります。

例えば癌の権威の教授などの中にはこのように成功しそうな手術のみを選んでリスクの高い手術は自分では執刀せず、自分の手術成功率をあげるなんてこともあります。

結局手術成功率というものはビックデータとしての統計的な確率としては有効かもしれませんが、各々の病院や医師個人の評価として用いるにはあまりに公平性や正当性に欠いたものだと思います。

腕の良い医師の手術成功率はあがりにくい!?

手術成功率が高いからといって良い病院だったり腕のいい医師であるとは限らないことは述べましたが、実際に腕のいい技術のある医師の手術成功率はどうなのでしょうか。

さすがに腕が良いのだから手術成功率は高くなると思う人が多いとは思いますが、そのようなことはありません。

当然のことですがリスク高く難しい手術には腕の良い医師が執刀します。

腕が良ければ難しい手術や、そもそも望みが薄い手術を執刀することが必然的に増えますので、うまくいかない場合も増えます。

結果として腕の良い医師の手術成功率は上がりにくくなります。

手術成功率が高い=腕の良い医師

手術成功率が低い=腕の悪い医師

という一般的に考えられている常識は全く正しくないのです。

そもそも日本人は、手術は成功して当たり前というようなゼロリスク信仰を強く持っている人が多いです。手術に限らず医療を受ける上でリスクがないなんてことはあり得ないことです。

リスクが高い手術に少しでも可能性のある技術を持った医師が挑み、結果として成功しなかったら医療ミスと言われ訴訟を起こされるようなことが数多く起こっています。

手術が成功しない=ミス

ではないのです。

それをミスとして訴訟を起こされるようなことが多く起こってしまってはリスクの高い手術を執刀しようという医師はいなくなるのが当たり前です。

誰もがゼロリスク信仰がいかにあり得ないことであるかをしっかり認識し、リスクの高い手術に失敗を恐れずに挑んでくれる医師に、手術成功率などという意味のない数字ではなく正当な評価を与えてもらいたいものです。 そして操作して手術成功率を上げて名声を得ているような心の腐った医師が淘汰されることを心から願っています。

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