人生の終わりと向き合う~ACPの必要性~
人生の終わりと終末期
人間だれしも例外なく人生の終わりには「死」が待っています。
これは避けようのない事実でこれまで歴史上の人物の多くが不老不死を求めたと言われていますが、未だ死から逃れられた人間は存在せずこれからも存在しないはずです。
そして生きている限りいつどこで死に直面するかわかりません。
助からない病気になるかもしれません。
事故にあうかもしれません。
しかし医療技術の進歩で死を延ばすことができるようになってきました。
正確に言えば死の前の終末期を延ばすことができるようになったのです。
命の危険が迫った状態でも生きることができることも多々あります。
いわゆる延命治療です。
しかしながら命の危険が迫った状態になると約70%の人が医療・ケアなどを自分で決めることや、自分の望みを人に伝えられなくなると言われています。
場合によっては本人が生きたいと思っていないこともあるかもしれません。
生きていることが幸せではなく苦痛なこともあるかもしれません。
そのようなことを防ぐために元気な時に意思表示をしておくことが必要になってきています。
これをアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning : ACP)と言います。
ACPとは
2010年流行語大賞にノミネートされたことをきっかけに「終活」という言葉が世間一般に広く知られ人々の関心が高まってきました。
終活とは自らの人生の終わりに向けた活動全般を言い、エンディングノート・葬儀・墓・遺言書・財産などについて準備していくことを言います。
ACPとはその中のエンディングノートに近いもので、
「患者本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の医療・介護だけでなく意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ終末期を含めた医療や介護について話し合うことや本人に代わって意思決定する人を決めておくプロセス」
を意味します。人生会議とも言います。
自分自身で意思決定できなくなったときに
- ・延命治療するのかしないのか
- ・自宅で過ごすのか
- ・施設で過ごすのか
などの意思を決めておいたり、想定していないことが起こった場合に自分の代わりに判断してもらう人を決めておいたりします。
このACPによって作成される文書はリビング・ウィルも織り込むことも可能で、その内容は終末期に最も尊重されるべきものとされてきています。
※リビング・ウィルとは「重病になり自分自身では判断ができなくなる場合に、治療に関しての自分の希望を述べておく書類のこと。特に医師たちに治療を中止し死ぬに任せてくれるように依頼する書類のこと。」
ACPを行う意味
延命治療を希望する人はどのくらいいるのでしょうか。
あまり多くないのではないでしょうか。
本人が意思表示をできない状態で延命治療に入るのは家族の希望であることがほとんどだと思います。
生きてほしいという気持ちは間違いなくあるでしょうが、それと同じように延命治療をせずに死を選ぶことは家族としても罪悪感が残るのも事実だと思います。
しかし本人の意思だとしたらその罪悪感を感じずにすむでしょうし、家族としても見送ることができるのではないかと思います。
また施設に入ることや自宅で過ごすことなどの選択についても本人と家族と一緒に事前に相談しておくことで、経済的な問題や介護する家族への負担に関して想定することで可能で最善の選択をできるのではないでしょうか。
本人の希望が経済的・負担的に可能なのかどうなのかまで相談することができます。
このようにACPを行うことで本人の希望した終末期を送ることができ最期まで幸せな人生を過ごせるということだけでなく、家族の負担や不安を軽減することで本人だけでなく家族も今をより良く生きることができるのだと思います。
今後の終末期医療
超高齢化による高齢者の増加と労働人口の減少から介護現場も今以上に厳しくなることも予想されます。
今後はACPなどをきっかけとして死と向き合うことで可能な限りの自立と自然な死を迎えるように終末期を過ごすようになることが目指されていくと思います。
最期まで人間らしく周りの大切な人に負担をかけないように人生の終わりを過ごし迎えるために、死と向き合い受け入れることが大切なのではないでしょうか。
医療者や介護提供者などと一緒でなくても家族だけでもこのような人生の終わりについての話を是非ともしてみてはいかがでしょうか。