【患者は知らない】検査と診断の基本的考え方

医療
【患者は知らない】検査と診断の基本的考え方

体調が悪い時などは病院に行きますよね。

病院に行くと、以下のような流れになります。

医師による
診断

医師が必要と
判断した検査

医師による
診断

治療
(投薬含む)

細かいことは多少省略していますが、大まかにはこのような流れと思ってください。

つまりは医師が診察したり検査したりすることで得た情報に基づいて、病名を診断します。

そしてその診断結果に対応した治療などの対応を行うということですね。

(積極的な治療を行わず、経過を見ていく経過観察の場合もあります。)

この流れにおいて恐らく多くの人は、診察や検査といった診査をしたら病名が確定すると思っているのではないでしょうか。

実はそう簡単にはいかないのです

例えば体調が悪くて病院に行って、血液検査をしたとします。

血液検査をしたら病名は即、確定すると思いますか?

そんなことはありません。

検査をすることだけで確定診断できる検査というのは、ほとんどないのです。

最も確定診断に近い検査は、「生検(生体検査)」という組織や臓器の細胞などを採取して細胞自体を顕微鏡で観察するものです。

しかし生検であっても100%とは言えませんし、病変の部位を特定していなければどこの組織を採取するかわかりませんので意味がありません。

また検査というのは、Aという病気かどうかのみを調べられる検査というような検査は基本的にないと思ってください。

つまり検査と病気は1対1対応ではありません

では医師はどのようにして診断しているのでしょうか。

<診察>

診察

病院に行ったらまず診察を受けます。

医師は様々な診査を行います。

  • ・問診  話を聞くことで情報を得る
  • ・視診  顔色や腫れなどを目で見て情報を得る
  • ・聴診  聴診器などで胸などの音を聞いて情報を得る
  • ・触診  症状のある場所などを手で触って熱感などの情報を得る

これらの「問診」「視診」「聴診」「触診」などによって得られた情報を基に、医師は考えます。

まずは患者が病的状態(正常でない病気などの状態)なのか否かを考え、病的状態であればその病名は何なのかを考えます。

ここで勘違いしてはいけないのが、この段階で病名が確定することはほとんどありません

この段階で出来ることは、可能性を列挙することです

その可能性というのも、Aという病気かBという病気か・・・というレベルではないことが通常です。

例えば「どこの臓器が疑わしい」というようなレベルです。

ですから次に検査に入ります。

<検査>

検査

検査と言っても、様々な検査があります。

  • ・体液検査(血液・尿・髄液など)
  • ・画像検査(X線,CT,MRI,PETなど)
  • ・内視鏡検査
  • ・生検
  • ・遺伝子検査
  • などなど。

他にもいろいろな検査が存在します。

医師は様々ある検査の中から、必要と思われる検査を行います。

この段階でも基本的には確定診断には至りません

イメージとしては最初に列挙していた可能性を少し絞り込んでいく感じですね。

そしてその可能性をさらに絞り込んでいくために、追加の検査をしていきます。

このようにして検査は、基本的には可能性を絞り込んでいくものだと思っておいてください

生検のように最後の確定診断に用いるものもありますが、基本的には検査は確定診断するものというより可能性を絞り込んでいくものです。

<診断>

ではいくつかの検査をしたら晴れて診断が確定するかと言えば、そうでない場合も多々あります。

例えばいくつかの検査結果から、かなり絞り込めたとします。

しかし残る可能性として一つは血液内科系の疾患、一つは耳鼻科系の疾患、一つは神経内科系の疾患だったとします。

(実際にこのような可能性の残り方をするかはわかりません・・・)

そして診察していた医師が循環器の専門であれば、判断はつきません。

そうなるとそれぞれの専門の医師に診てもらって判断してもらうことになります。

色々な科をたらい回しにされるというのを聞いたことがあるのではないでしょうか。

それはまさにこのような状態ですね。

<確定診断と除外診断>

診断

ここまで見てきたように、検査をしても病名が確定できない場合は多々あります。

結局最後まで確定診断をできないこともあります。

そのような時に用いるのが「除外診断」です。

一つに決められないのであれば、一つずつ可能性を潰していくしかないのです。

例えば、検査をいろいろしたけれどA、B、Cという病気の可能性が残ったとします。

どれもあり得るような状態です。

このような場合には、まず一番可能性の高そうなAだと仮定して、Aに対する治療などを行います。

それで改善したらAだったのだろうとなります。

改善しないようなら次に可能性の高いBを疑ってBに対する治療などを行い、また改善するかどうかをみていくといった流れになります。

このような除外診断の方が確定診断より多いのです。

<まとめ>

流れをまとめると、以下のようになります。

フローチャート

実際には病名がわからなくても対応する場合もあるでしょうし、もっと複雑ではありますが、大まかな検査と診断の考え方を説明しました。

多くの人が検査したら病名がわかって治療できると思っていると思いますが、実はそう簡単な話でありません

さらに言えば、予測も立っていない状態でむやみやたらに検査をするのは、まるで意味がありません。

しかし今後医療が進歩していけば、検査の精度も上がってくるかもしれませんね。

期待しておきましょう!!