虫歯

歯科
虫歯

1.虫歯とは

虫歯とは、虫歯菌の出す酸によって歯が破壊されてしまう病気です。
(詳しい虫歯のでき方は次章で記述します。)
歯周病と並び、口腔内の二大疾患の一つです。

虫歯の特徴として
自然治癒しないという特徴があります。
自然治癒しないため、基本的に治療をしない限り虫歯は進行し続けます。
また治療を受け虫歯を治しても、風邪が治るなどの本質的な「治る」とは全く異なります。
風邪が治るということは「元の状態に戻る」ということです。
しかし虫歯で失ってしまった歯は、決して元の状態に戻りません。
虫歯になってしまった部分を削って金属などの詰め物で歯の代用をしているにすぎないのです。

歯科治療に用いられる材質は年々進歩していますが、天然の歯に並ぶ咀嚼(ソシャク:物を咬むこと)に適した材質は存在しません。
つまり、虫歯になった分だけ咀嚼を含めた口腔内の機能は低下し続けてしまいます。

ワンポイント

虫歯が自然治癒しない理由として歯には歯髄を除いて血流がなく、免疫能力や再生能力がないことがあげられます。 しかし、基本的に治療を受けないと虫歯は進行し続けると書きましたが、ごくごく初期の虫歯の場合は歯磨きなどをしっかりできていると進行しない場合もあります。

2.虫歯のでき方

まず、虫歯ができるためには以下の4つの要素が必要になります。

歯質

つまり歯の事です。当たり前のことですが、歯がなければ虫歯にはなりません。

細菌

虫歯菌が出す酸で歯が溶かされるのが虫歯です。この虫歯菌は口腔内常在菌といい、誰の口の中にも常に存在しています。

食べ物の磨き残しの中の糖が虫歯菌の餌になります。糖を栄養として虫歯菌は繁殖し、歯垢(シコウ;プラークとも言います)を形成し酸を出して虫歯を作ります。

時間

上の3つの要素が重なる時間が長ければ長いほど虫歯になりやすくなります。

この4つの要素が重なってしまうと虫歯になってしまいます。

では虫歯のでき方を説明していきます。

歯垢

磨き残しの糖分を虫歯菌が栄養として食べることで、ネバネバした歯垢(プラーク)という虫歯菌の巣を作ります。この歯垢で虫歯菌は繁殖していきます。

虫歯

歯垢の中に住み着いた虫歯菌は、糖を栄養として活動的になり、酸を作り出してその酸が歯を溶かします。これが虫歯の始まりです。

上記の4つの要素以外に、唾液も虫歯に大きな影響を与える要因です。

唾液は歯の表面についた汚れを洗い流したり、虫歯菌の出す酸を中和したりします。

しかし、唾液は夜寝ているときはあまりでません
(朝起きたら口がからからなのはこのためです)

そのため、虫歯は夜寝てるときに最もできやすいのです。

夜寝る前の歯磨きが一番大事です!!

その他の(間接的な)原因

直接的原因である歯垢をなくしてしまえば虫歯にならないのですが、同じように歯を磨いている人でも虫歯になりやすい人とそうでない人がいます。
これは、生活習慣や口腔内の環境に個人差があるためです。
虫歯になる間接的な原因には以下のようなものがあります。

[唾液]

唾液は、上でも述べたように歯の表面についた汚れを洗い流したり、虫歯菌の出す酸を中和します。
そのため、唾液が少ない人は虫歯になりやすい傾向があります。

[生活習慣]

生活習慣の中でも、特に食生活は虫歯のできやすさを左右する大きな要因になります。
まず、飴やソフトキャンディーなどを好む人やジュースやスポーツドリンクなどの清涼飲料水などを好む人は虫歯になるリスクは高くなります。
また、食事や間食の回数や時間帯にも虫歯のリスクは左右されます。
寝る前に飲み食べする人や間食の回数が多い人も虫歯のリスクは高くなります。

[歯並び・矯正]

歯並びが悪い場合や、矯正治療中にワイヤーなどの装置が口に入っている場合、どうしても磨きにくい部分ができてしまい、磨き残しができやすくなります。その結果、磨き残しがある部分は虫歯になりやすくなります。

[歯の質]

人によって病気になりやすい人となりにくい人がいるように、虫歯にもなりやすい人となりにくい人がいます。歯の質に強い弱いがあるのです。
そのため、同じように歯みがきしても虫歯になりやすい人となりにくい人がいます。

ワンポイント

脱灰と再石灰化のバランス

脱灰(だっかい):歯が溶ける→虫歯になる方向
再石灰化(さいせっかいか):歯を元に戻す(唾液やフッ素の作用)

一日うちで口腔内が酸性(PHが低い状態)になると虫歯になりやすくなります。

間食の回数が多いこと、だらだら食事することや寝る前にお食事するは、口腔内が酸性になることが増え、虫歯のリスクを高めます。規則正しい食生活も虫歯の予防には大切なことです。

3.虫歯の進行

虫歯の事をカリエス(Caries)と言います。
歯医者ではその頭文字をとって虫歯の事をCと言うことが多いです。
虫歯の進行具合によって「C1、C2、C3、C4」と分けられます。
C1のほうが軽い虫歯でC4の方が進行した虫歯です。
では虫歯の進行を見ていきましょう。

C1

初期の虫歯で、虫歯がエナメル質に限局しているものです。
痛みは出ないことがほとんどですので、この段階では虫歯ができたことに気づかない場合がほとんどです。
また、治療もこの段階で行えば、麻酔をしなくても痛みなく治療できることが多いです。

C2

虫歯が象牙質まで進行したものです。痛みや、冷たいもの・熱いものにしみる、といった症状が出てくることもあります。象牙質を削るときには痛みが生じる場合も多いので、C2の治療には麻酔を使うことが多いです。

C3

虫歯が大きく進行して歯髄まで進行してしまった状態です。
ここまで進行すると激しい痛みがでてきたり、咬むと痛い、などの症状が出てくることも多いです。
歯髄は虫歯菌によって感染してしまっていますので、治療としては歯髄を取って根の治療が必要になります。

C4

虫歯を放置し続けた結果、歯冠が崩壊してしまい、歯根のみが残った状態です。
このように歯根しか残っていない状態を残根と言います。
歯髄はすでに死んでいます。状態によって痛みがある場合とない場合があります。
根の状態によっては抜歯をしなくてはならないことも多く、抜かずに残せるのであれば根の治療からしなくてはなりません。程度にもよりますが根の先端の周辺に膿がたまってしまうことも多くみられます。

ワンポイント

C1よりさらに進行のないCOという状態があります。 これは、「要観察歯」と言い、しっかり磨いてケアができていれば元に戻ったり、虫歯がこれ以上進行しないこともあります。 COは削らず様子を見ることがほとんどですが、継続的にケアが必要です。 余談ですがCOの「O」は「ゼロ」ではなくアルファベットの「オー」です。 Caries Observationといい、「経過観察の虫歯」という意味です。

4.虫歯の治療

虫歯治療の基本は虫歯を取り除くということです。
基本的には虫歯は自然治癒しないため、虫歯を除去して、歯の代わりになる材料で補うことが必要になります。 
虫歯の治療方法はいくつかの種類があります。 
どの治療方法を選択するかは

  • 虫歯の深さ(前項のC1~C4)
  • 虫歯の範囲
  • 虫歯のある場所(どの歯なのか、歯のどの面なのか)
  • 患者さんの要望

これらを総合的に判断し歯科医は治療方法を決定しています。

大きく分類すると

C1,C2に対する治療(根の治療が必要ない治療)

C3,C4に対する治療(根の治療が必要な治療)

に分けることができます。
根の治療はいわゆる「神経の治療」です。これを根管治療といいます。
ここではC1,C2に対する治療を説明します。根管治療に関しては根管治療ページを参照してください。

C1,C2に対する治療

C2までは虫歯が歯髄まで及んでいない状態ですので、歯髄を残して治療することができます。
C1,C2に対する治療方法としては大きく分けて以下の2つがあります。

  • 直接法(CR:白い詰め物を詰める治療)
  • 間接法(型をとる治療)※型を取ることを「印象」をいます。

このどちらを選ぶかは先述した虫歯の大きさや場所で決まりますが大まかに言うと

  • 虫歯が小さいほどCRになりやすく、大きいほど印象になりやすい。
  • 虫歯のある歯が前であるほどCRになりやすく、奥であるほど印象になりやすい。
  • 虫歯が隣接面を含まないほどCRになりやすく、含むほど印象になりやすい。(CRだと適切なコンタクトの付与が困難なため)

といった傾向になります。
ただし、上記はあくまで目安です。
患者さんの要望や、様々な他の要因、歯科医師の経験・好みによっても変わってきます。
ではそれぞれ詳しく説明していきましょう。

直接法(CR:直接白い詰め物を詰める治療)

CR(シーアール;コンポジット レジンの略)という材料を直接詰める治療法です。
ですから正確には「CR充填」といいます。

長所

1回で治療が終わる。
保険で白い詰め物で治療できる。

短所

強度があまり強くない。
操作が難しい。
乾燥状態にしないと接着しにくい。(詰められる場所が限られる)
適切なコンタクトの付与がしにくい。

前歯の隣接面に虫歯ができてしまった状態です。

虫歯を削って除去します。C1では麻酔はしないで済むことが多く、C2は麻酔をすることもあります。虫歯を除去し終わったら、CR専用の接着剤を用いてCRを詰めていきます。CRは詰めたときは軟らかいので、CR専用の光をあてて固めます。

詰めたCRを形態修正し、研磨したら終了です。一連の作業を1回の治療で行うことができます。

[CR例1]

[CR例2]

ワンポイント

CRは白い詰め物ですが、同じ白色でも明るさなどが異なる種類があります。 いくつかの種類の中から最も合った色を歯科医が選んで詰めます。 CRはプラスチック(合成樹脂)なので、吸水性を持ち、2~3年位で黄色っぽく変色してくることが多くあります。

間接法(型印象をとる治療)

型(印象)を取る治療は大きく分けて二つに分けられます。

1.インレー(歯を部分的に詰める詰め物)

2.クラウン(歯を全周おおうかぶせ物)

これらは虫歯の大きさ、範囲などで使い分けます。

長所

CRに比べ強度がある。
大きな虫歯にも対応できる。
適切なコンタクトを付与しやすい。
CRに比べ操作がしやすい。

短所

1回では終わらず基本的に2~3回かかる。
保険だと銀歯になり、白い材料を使う場合は基本的に自費になる。
削る範囲が大きくなる。

1.インレー

大臼歯の隣接面に虫歯ができてしまった状態です。

隣接面の接触をまっすぐ削ってなくします。
この削り方をスライスカットと言います。

咬合面に詰め物が外れないように入り組んだ形態を作ります。
形を整えた後は印象をとり、仮のふたをして(仮封)1回目の治療は終わりです。

2回目の治療で仮封を外して、出来上がってきた詰め物を専用の接着剤でセットします。
保険の範囲ではいわゆる銀歯になりますが、保険外の材料であれば白い材料でも可能です。

[インレー例1]

虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。この後印象を取り、仮封して、この日の治療は終わりです。
2回目の治療です。保険のInを接着剤であるセメントを用いてセットし終わった状態です。

[インレー例2]

虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。この後印象を取り、仮封して、この日の治療は終わりです。
2回目の治療です。自費のハイブリッドインレーをセメントを用いてセットし終わった状態です。

2.クラウン

大臼歯の広範囲に虫歯ができてしまった状態です。

歯の全周を削り型をとり、仮の歯、もしくは仮のふたをしてこの日は終わりです。クラウンの場合、削る範囲が大きいために、削った刺激で歯髄が炎症を起こし、痛みが出ることもありますので、印象は次にすることもあります。

できてきたかぶせ物を専用の接着剤でセットします。保険の範囲ではいわゆる銀歯になることが多いですが、保険外の材料であれば白いセラミック製のかぶせ物で作ることができます。

[クラウン例1]

虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。
保険のクラウン(FCK)をセメントを用いてセットし終わった状態です。

[クラウン例2]

虫歯を削って除去し、歯の形を整えた状態です。
自費のクラウン(オールセラミック)をセメントを用いてセットした状態です。