天皇制は民主主義か?
日本は、天皇を中心とした君主制の国家制度をはるか昔から続けてきました。
天皇制は、狭義には大日本帝国憲法下の君主制としての天皇制を指し、広義には近代以前の天皇制や、現代の象徴天皇制も含めます。
(今回説明する天皇制とは、広義での天皇制を指すこととします。)
日本の採用している天皇制について、「独裁政治」のようなイメージを持たれている人も多いようですが、実際には究極の民主主義と言えるものです。
その理由について説明していきます。
なお、思想的な話ではなく、システムとしての話になります。
天皇制は民主主義の究極形態
現在の天皇制において、天皇は国家における最高の存在(象徴)ではありますが、何も権限を持っていません。
言ってみれば
- 権威はあるが、権力は無い
ということです。
だとすると、無意味な存在のようにも思えますが、そうではありません。
実際的な話は別として、日本の権力を最も持っているとされている人は、内閣総理大臣です。
その内閣総理大臣を国民の意志によって任命するのは、天皇です。天皇に権力は無いものの、最高権力者よりも上位の存在です。
そして、その天皇の最も大切な宝は、国民です。その国民のために内閣総理大臣をはじめとした権力者は政治を行います。
つまり立ち位置の関係としては
- ・天皇
- ・政治などを行う権力者
- ・国民
となりますが、もっとも上位に位置する天皇が最も大切にするのは国民です。
すると、権力者は自分の上司のような存在の天皇が大切にしている国民のための政治を行わなくてはならなくなります。
では、この3者のうち天皇を外すとどうなるかといえば、権力者への抑止力が無くなってしまいます。
すると、権力者を抑止する力は存在しなくなり、むしろ独裁に近づいてしまう可能性が出てきてしまいます。権威と権力が集中してしまうのです。
つまり、天皇制というのは権威と権力を分けたシステムと言えるわけです。それによって、権力者は国民のために政治を行う必要があるので、民主主義と言えるわけです。
日本においては、昔からこのシステムが長年続いてきています。議会などが無かったころから天皇制があったことにより、一つの民主主義の形態を作り上げてきたとも言えます。
もちろん、時代によっては歪んでしまっている時代もありますが、世界中の国を見ても近代以前において民主主義と呼べる形を作り上げている国は見当たりません。
そのような意味で、天皇制というのは非常に優れたシステムだと言えるのです。
天皇は人柱
このような優れたシステムを構築する上で必要になるのは、言うまでもなく天皇の存在です。
天皇陛下を崇拝している人もいれば、何とも思っていない人や否定的な人もいるかもしれません。個人的にも、崇拝はしていません。
しかし、感謝はしています。
天皇になるべくして生まれた以上、天皇制というシステムを継続するための必要不可欠な存在として人生を全うしなくてはならないことを義務付けられます。
恐らく、日本で最も自由のない人でしょう。個人の思想を持っていても、それを言うことも許されませんし、自分の主義主張に繋がる行動も許されません。
天皇としてやらなくてはならないことは、ひたすらに国民のことを思い続けることだけです。それを生まれた時から義務付けられているのが天皇なのです。
そして天皇の存在を保証するのは、民意だけです。天皇が国民のことを思い続けるからこそ、国民は天皇に感謝し崇めるということです。
この形がはるか昔から構築されていたというのは、驚異的なことだと思います。
強制力ではなく、天皇と国民を結ぶものが「信頼」という目に見えないものなのです。
信頼というものの上で、言ってみれば天皇は日本における最大の人柱です。
私たち日本人は、天皇陛下の人生の自由を犠牲にしてもらうことによって、天皇制という優れたシステムを手に入れているとも考えられるのです。
まとめ
- ・天皇制は、権威と権力を分離したシステム
- ・天皇制は、民主主義の究極とも言えるシステム
- ・天皇は生まれながらに人柱になってくれている
天皇制は、日本が長い歴史の中で育んできた民主主義を成り立たせるための一つの解答とも言えるシステムだと思います。
天皇陛下への感情論は人それぞれかもしれませんが、このシステムを手放すのは賢明とは言えません。もし手放してしまったら、そうそう復活させることのできないものです。
根底にあるのが、長い歴史の上に成り立っている信頼ですからね。
そして私たち日本人は、天皇陛下をはじめとする皇族の方々が自身の自由を犠牲にして、このシステムを守ってくれているということを認識するべきではないかと思います。
人間にとって最も大切で尊いものの筆頭が、「自由」です。自由を失うと、人生は一気に色あせると思います。
しかも自由を失うことを自分の判断で行うのではなく、生まれながらに決定されているのですから、まさに人柱です。
そのような役割を一身に背負ってくれている天皇陛下を崇拝しなくても、感謝はするべきではないかと感じます。